『花や咲く咲く』(あさのあつこ)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2019/07/06 『花や咲く咲く』(あさのあつこ), あさのあつこ, 作家別(あ行), 書評(は行)

『花や咲く咲く』あさの あつこ 実業之日本社文庫 2016年10月15日初版


花や咲く咲く (実業之日本社文庫)

昭和18年、初夏。小さな温泉旅館の娘・三芙美は、女学校の友だちと、思いがけず手に入った美しい布でブラウスを縫い始める。おしゃれにときめき、夢を語り、笑いあう - そんな仲良し4人組にも、やがて戦争の暗い影が忍び寄ってきた。「現代の日本でたたかっている少女たちに贈りたい」- 祈るような想いで著者がつづった、心ゆさぶる〈戦時下〉青春小説。(実業之日本社文庫)

※ あらすじ(ほぼ解説のまま)

本書は、太平洋戦争下に生きる少女たちの夢と運命を描いた物語です。大阪から西へ四十里余、古くから湯治場として知られる湯藤町が主な舞台となっています。

物語の主人公は、父の死後、母が女手ひとつで営む「山風荘」の長女・室生三芙美(みふみ)。おしゃれが大好きな三芙美は、可愛くてきれいな洋服を考案しては自分の手で縫いあげるのが夢だったのですが、戦時中であるために自粛が求められ、モンペ以外の服は禁止されています。

そんな三芙美の親友は、のんびりして欠伸が似合う三島則子、大料亭の娘で美貌の高崎和美、中性的な美女で頭も運動神経もいい川満詠子の三人です。嘉陽高等女学校に通う四人は同い年の幼馴染みで、大デュマの『三銃士』になぞらえて〈四銃士〉と言われた仲良しです。一緒にいるだけで楽しくて笑いがこぼれるのですが、笑い声をたてれば「非国民」と叱責される。それほど社会状況は逼迫していたのでした。

※ 大デュマ:アレクサンドル・デュマは、フランスの小説家。『椿姫』を著した同名の息子と区別するために「大デュマ」とも呼ばれる。
・・・・・・・・・
幼い少女が戦火にまみれ、取り返しのつかない不幸に見舞われ、いっとき絶望するもその時そこであるはずのない奇跡(偶然)と出合い、少女は救われ、少女を救った奇跡と思われたことが、実はあらかじめ彼女の人生に用意された「必然」であったのに気付かされ、焼け野原に佇むも、尚生きて何事かを成さんとする・・・・・・・、そんな話を勝手に想像していました。

しかしながら、この本にはまるでそんなことは書かれていません。そもそも強烈な戦争体験が読みたいのなら、別の本を読んだ方がいい。それは解説にもちゃんと書いてあります。

物語は三芙美を語り手にして、彼女の目に映るものと内心を、一つひとつ繊細に描出していく。揺れ動く十代の心を描き出す筆致は、あさのあつこさんの真骨頂だ。そしてもうひとつ、反戦、非戦の物語にしていないこと。あさのさんが描くのは、戦時下の少女と、少女を取り巻く人々の姿であり、親子や友だちの「つながり」である。

では、裁縫好きの少女が集まって、(緊迫した戦時下にもかかわらず)ギャアギャアワーワーと家の外にも聞こえるくらいに騒がしく笑いたて、どの布を使ってどんなブラウスを作るのか、それを一生懸命相談して終わる話ですよと言えば、それは余りに失礼に過ぎるかと思うのですが、そう思えてしまうのだからしょうがない。

四人の少女が四人ともに妙に明るいのがあざとく、読んでいるとイタくなります。あまりに「真っ当」で、空々しくさえ感じます。当時の少女はそんなものだというならそれまでのことですが、そこが腑に落ちません。

この本を読んでみてください係数 70/100


花や咲く咲く (実業之日本社文庫)

◆あさの あつこ
1954年岡山県英田郡美作町(現:美作市)湯郷生まれ。
青山学院大学文学部卒業。

作品 「バッテリー」「バッテリーⅡ」「たまゆら」他ジャンルを超えて多数

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