『涙のような雨が降る』(赤川次郎)_書評という名の読書感想文

『涙のような雨が降る』赤川 次郎 双葉文庫 2018年4月15日第一刷


涙のような雨が降る (双葉文庫)

少年院を出たその日から、私は風祭家の令嬢・川中歩美の身代わりとなった。何不自由ない生活ではあるものの、逆に不安が募り・・・・・・・。私は、何も知らされてはいない。本物の歩美はどこにいるのか? なぜ私が選ばれたのだろうか。- 陰謀が渦巻く中、真相をつきとめようと試みた私を待ち受けていたのは、大人たちの理論が支配する哀しい社会の現実だった。

十五歳ながら経歴はワケありの尾崎由美は、大企業グループトップ・風祭信代の孫・歩美の身代わりとなった。信代やその周りは歩美と会ったことがないため、由実はすんなり迎え入れられる。慣れない “お嬢様生活” に苦戦する由美だったが、正体を暴こうとする者が動き出し・・・・・・・。歩美の存在が消された理由、由美の周りで次々と起こる事件の真相は - 大人でも子供でもない、冷静だけど果敢な少女を待ち受けていた運命は!? 予想のつかないノンストップサスペンス。(双葉文庫)

彼女は十五歳にしては大人びた少女で、勉強は出来ないものの、それはそれまでその環境になかったからのことです。それよりもむしろ、彼女は生きる上での多くの「方便」を学んでいます。冷静にして沈着。大人以上に、機微に通じています。

作中、彼女はこんなことを思います。

- 組織。 組織という「王様」が、みんなを従えているのだ。「組織」なんて名前の人間がいるわけじゃないのに、その組織を作っているのは、一人一人の人間なのに、一旦「組織」という怪物が誕生すると、それは独り立ちして、大きな力を持ってしまうのである。

だから、「組織のため」と言われると誰も反対できなくなってしまう。何かの目的があって組織が作られるはずなのに、いつの間にか、「組織を守ること」が第一の目的になってしまうのだ。(P192)

大人になると否応なく誰もが知ることになる、そんな現実。それがために多くの人間がダメになり、行き場を失くし、上手く生きられなくなったりもします。口を閉ざし、言いたいことを言わなくなってしまうのは、それでも生きていかねばならないからです。

なるべくなら、そんなことを知るのは、遅ければ遅い方がいい。なのに。

「歩美」となった少女は、それを由美の頃から知っています。知っているからこそ、「歩美」のままではいられないのでした。

 

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涙のような雨が降る (双葉文庫)

◆赤川 次郎
1948年福岡県生まれ。
桐朋高等学校卒業。

作品 「幽霊列車」「三毛猫ホームズ」シリーズ、「天使と悪魔」シリーズ、「鼠」シリーズ、「ふたり」「雨の夜、夜行列車に」怪談人恋坂」「記念写真」他多数

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