『あのこは貴族』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『あのこは貴族』山内 マリコ 集英社文庫 2019年5月25日第1刷

あのこは貴族 (集英社文庫)

TOKYO NOBLE GIRL - 東京には貴族がいる

東京生まれの華子は、箱入り娘として何不自由なく育てられたが、20代後半で恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされてしまう。名門女子校の同級生が次々に結婚するなか、焦ってお見合いを重ねた末に、ハンサムな弁護士 「青木幸一郎」 と出会う。一方、東京で働く美紀は地方生まれの上京組。猛勉強の末に慶應大学に入るも金欠で中退し、一時は夜の世界も経験した。32歳で恋人ナシ、腐れ縁の 「幸一郎」 とのダラダラした関係に悩み中。境遇が全く違って出会うはずのなかったふたりの女。同じ男をきっかけに彼女たちが巡り合うとき、それぞれ思いもよらない世界が拓けて - 。結婚をめぐる女たちの葛藤と解放を描く、渾身の長編小説。◎解説 雨宮まみ (集英社文庫)

目次
第一章 東京 (とりわけその中心の、とある階層)
第二章 外部 (ある地方都市と女子の運命)
第三章 邂逅 (女同士の義理、結婚、連鎖)
第四章 一年後

(解説) 私たちは何を持っていて、何が欲しいのか?  雨宮まみ

今、目の前にあることを書く。誰も触れないけど、確実にそこにあることを山内マリコは書く。タイトルから、女同士のマウンティングとか、格差がどうとかそういう内容を期待するかもしれない。けれど、これは、まったくそういう話ではない。

東京に生まれ、渋谷区の松濤に持ち家があり何不自由なく暮らす華子は、結婚相手を探す段になり、自分は自分と同じハイクラスの人間としかつきあえない、わかりあえないと感じる。逆に、ハイクラスの男と付かず離れずで交際している美紀は、男が絶対に、庶民で利用価値のない自分とは結婚しないということを知っている。どんなに気が合っていても。

東京には目に見えない階級があり、男も女もそれに囚われている。その階級の中での当たり前のルールに従い生きることが、一番安心な道なのだ、とハイクラスの人たちは思っている。華子もその一人だったが、理想と思える結婚をしても、そこで自分の心は置き去りにされてしまう。

決まった階級やグループの中で、人に羨ましがられるような立場に立つとか、いい男と結婚するとか、そういうゲームの中でも人は普通に傷つくし、なにも感じないはずがない。感情や心が求めているものを無視しすぎると、空虚な毎日が待っている。そのことを登場する女たちは自分で悟っていく。(「青春と読書」 2016年12月号/解説より)

※昨日文庫が出たので、いの一番に買いに行きました。最近、最も読みたかった本です。

一日がかりで読みました。期待通りに面白く、特に私が気に入ったのが - 華子が幸一郎と出会い、次にある事がきっかけで幸一郎と美紀とが浅からぬ関係だとわかり、遂には華子と美紀が対峙するまでを描いた - 第一章です。

たぶん読み方は違うのでしょうが、そこで描かれる東京のとある階層 - それはどこから見ても文句の付け様がない生まれ持っての富裕層 - に向けた著者の、冷静かつ整然とした中にもありったけの皮肉を込めた眼差しに (少なくとも私はそう感じました)、並々ならぬものを感じたのでした。

どう思うかはあなたの勝手です。ただ言えるのは、東京には - 同じ人間でも地方の人間とは天と地ほどに違う - 生粋の貴族が存在する、ということです。

この本を読んでみてください係数  85/100

あのこは貴族 (集英社文庫)

◆山内 マリコ
1980年富山県富山市生まれ。
大阪芸術大学映像学科卒業。

作品 「アズミ・ハルコは行方不明」「ここは退屈迎えに来て」「さみしくなったら名前を呼んで」「パリ行ったことないの」「かわいい結婚」他

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