『犬』(赤松利市)_第22回大藪春彦賞受賞作

公開日: : 最終更新日:2024/01/08 『犬』(赤松利市), 作家別(あ行), 書評(あ行), 赤松利市

『犬』赤松 利市 徳間書店 2019年9月30日初刷

大阪でニューハーフ店 「さくら」 を営む桜は63歳のトランスジェンダーだ。23歳で同じくトランスジェンダーの美少女・沙希を店員として雇い、慎ましくも豊かな日々を送っていた。今さらと思いながらも、女の幸せを忘れられない桜は、気を惹くために、安藤から持ち掛けられた儲け話に乗ることを決意。老後のためにコツコツ貯めた、なけなしの1千万円を用意するが・・・・・・・。

女、男、老、金・・・・・・・。
尽きぬ悩みを足掻く力とは。鬼才が放つ狂乱の疾走劇。
大阪発。愛と暴力の旅が、今、始まった。
嬲り、嬲られ、愛に死ね! 
(徳間書店)

読書メーターに、実に的を得た感想を見つけました。縷々私が書くよりも、まずはそれを読んでみてください。”パット長月” さんからの投稿です。

著者は二作目。グロい・・・・・・・が、やっぱりおもしろかった。還暦過ぎて器量と身体の劣化に苦しむMtFの桜、彼女? を母と慕う20代前半の若くて美しいMtFサキッチョ、老境に入ってもなお両刀使いで変態ドSクズ野郎の安藤の間で展開する凄まじい暴力・凌辱・そしてじんとくる親子? の愛と絆の物語。純子 もそうだったが、外道 (「純子 のウ〇コに対して今回は痛そうな肛姦が主要パーツと人情が奇妙に同居しつつも、ハッピーエンドで締めてくれるせいか、結局のところ最後は人情のほうに傾いて気分よく読了した。たいした力量である。

“気分よく読了した” パット長月さんこそ、なかなかの力量である。そう思うのは、読後間もない私だからでしょうか。

確かに、ハッピーエンドであるには違いありません。但し、そこへ行く着くまでに繰り返し見せられる一切容赦のない暴力や狂気の果ての凌辱に、はたしてあなたは堪えられるでしょうか? 気分が悪くなったりはしないでしょうか。

見てもいない光景が目に焼き付いて、嗅ぎもしない臭いが鼻に付き、桜や沙希の痛みをわが身に感じ、あまりのおぞましさに、読むのを止めはしないでしょうか。それが心配です。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆赤松 利市
1956年香川県生まれ。

作品 「藻屑蟹」「鯖」「らんちう」「ボダ子」「純子」等

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