『ずうのめ人形』(澤村伊智)_書評という名の読書感想文

『ずうのめ人形』澤村 伊智 角川ホラー文庫 2018年7月25日初版


ずうのめ人形 (角川ホラー文庫)

不審死を遂げたライターが遺した謎の原稿。オカルト雑誌で働く藤間は後輩の岩田からそれを託され、作中の都市伝説 「ずうのめ人形」 に心惹かれていく。そんな中 「早く原稿を読み終えてくれ」 と催促してきた岩田が、変死体となって発見される。その直後から、藤間の周辺に現れるようになった喪服の人形。一連の事件と原稿との関連を疑った藤間は、先輩ライターの野崎と彼の婚約者である霊能者・比嘉真琴に助けを求めるが - !? (角川ホラー文庫)

(さあ想像しながら読んでみてくだい。想像すればするほどきっとあなたは怖くなります)

最初は遠くに見えていた。今はベッドの脇にいる。
傍らで突っ立って、こっちを見上げている。
頭から布団をかぶっていても分かった。
するはずのない気配がするからだ。ここには誰もいないはずなのに。
頭の中に姿が浮かぶ。いつの間にか視界の片隅にいたその姿が。
やつの姿が。

あの子から聞いたとおりの格好をしている。
猫くらいの大きさで、黒い振袖を着ている。おかっぱ頭で、手をだらりと垂らして、首は少しだけ傾いている。そしてその顔は真っ赤な -
わたしは思わず目を開けた。真っ暗な布団の中で息を継ぐ。
この暗闇の外側のことを考えてしまう。布団一枚隔てた向こうにいる、やつのことを。
やつは四日かけて、この距離まで詰めてきたのだ。

(これだけで、もうこわい。いるはずのない何者かの気配に圧倒され、振り向こうにも振り向けない - 夜中の電話でふいに「後ろを見るな」と言われた時みたいな・・・・・・・ )

わたしは布団を撥ね除けた。意を決して傍らを見る。
ベッドの脇には何もなかった。どこへ、と思った瞬間。
ふふ、ふふふふふ
背後で笑い声がした。わたしは反射的に声のした方を向いてしまう。
やつが目の前にいた。
黒くて白くて赤い -
人形が

枕の上に突っ立って、わたしの鼻の先に、毛羽立って、ほつれて、絡まり合った真っ赤な真っ赤な -
くふふふふふふふふ
糸の奥から笑い声が漏れ聞こえた。

友達のおばあちゃんが子供だったころの話です。
おばあちゃんは、ある田舎のお屋しきに住んでいました。お屋しきは広くて、友達とよくかくれんぼをして遊んでいたそうです。
ある日、おばあちゃんはいつものようにかくれんぼをして、家の裏にある大きな蔵に入ったそうです。その時は鍵が開いていました。
古いつづらでいっぱいの、暗い蔵の中で、おばあちゃんは身をかくしました。
鬼をやっていた友達が来ないので、退くつしたおばあちゃんは蔵の探検をしました。すると、古い小さな木の箱を見つけました。ほこりを払って開けると、中には人形が入っていました。
黒いふりそでを着た、女の人の人形でした。
顔だけが、赤い糸で何重にもぐるぐる巻きにされていました。
それを見たおばあちゃんは、とてもいやな気持ちになったそうです。
おばあちゃんがいなくなった、と友達が泣いて騒いだので、おばあちゃんのお父さんとお母さんが、家中を探して蔵を開けました。おばあちゃんはとても怒られましたが、人形の話をすると、二人は急にだまって、友達を帰しました。そして、お座しきでおばあちゃんに、人形の話をしました。
あれは、ずうのめ人形というんだよ
ずっと昔から家にある、呪いの人形だ
こわしても捨てても呪われる。だから顔をしばって、ふういんしているんだよ
「えらいおぼうさんにたのんで」
お父さんとお母さんは、怖い顔でそう言いました。(都市伝説「ずうのめ人形」より)

しばらくの後、おばあちゃんの友達(一緒にかくれんぼをしてしていた子)は、急に病気になって死んだそうです。おばあちゃんはとても悲しくて泣いてばかりいました。するとお母さんが、

ずうのめ人形がやったんだよ。たまにそういうことをする - と言いました。

 

この本を読んでみてください係数  85/100


ずうのめ人形 (角川ホラー文庫)

◆澤村 伊智
1979年大阪府生まれ。
大阪大学卒業。

作品 「ぼぎわんが、来る」「ししりばの家」「恐怖小説 キリカ」他

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