『肉弾』(河﨑秋子)_書評という名の読書感想文

『肉弾』河﨑 秋子 角川文庫 2020年6月25日初版

肉弾 (角川文庫)

大学を休学中の貴美也は、父親に反発しながらもその庇護下から抜け出せずにいた。北海道での鹿狩りに連れ出され、山深く分け入ったその時、父子は突如熊の襲撃を受ける。息子の眼前でなすすべなく腹を裂かれ、食われていく父。どこからか現れた野犬の群れに紛れ1人逃げのびた貴美也は、絶望の中、生きるために戦うことを決意する。圧倒的なスケールで人間と動物の生と死を描く、第21回大藪春彦賞受賞作。(角川文庫)

「怒涛のエンターテインメント」 としては悪くありません。ただ、語られるテーマの多さはいかがなものか。熊と犬の話以外はおしなべて凡庸で、かえって物語を薄味にさせてしまうのではと。そんな感じがしなくもありません。「人間と動物との関係がきわめて暴力的に、しかも意図的に野卑なかたちで介入し、読者を巻き込んでゆく」 だけで十分ではないかと。

本書は、人間と熊と犬が繰り広げる極限の物語である。場所は北海道の山中 (摩周湖周辺の森林地帯)、描かれるのは四日間の一部始終。読者はつねに、低い唸り、骨の軋み、肉と肉がぶつかり合う音に鼓膜を震わせることになる。と同時に伝わってくるのは、肉弾が飛び交うありさまから目を逸らさせはしないと腹を括った著者の気魄だ。

二十歳の青年キミヤ (貴美也) が遭遇する事態は悪夢さながら、生死を賭けた通過儀礼である。ライフル銃を担いで狩猟に出る父に連れられ、カルデラの中心部へ足を踏み入れてゆくのだが、父と息子とのあいだにはあらかじめ鬱屈した感情が蓄積している。

父は、キミヤからことごとく日常を奪う相手であり続けてきた。(中略) 自分を肯定できず無気力に苛まれるキミヤは、父に強引に勧められるまま銃砲所持許可と狩猟免許を取得。狩猟をもくろんで北海道にやってきたふたりの前に、突如、巨大な熊が立ちはだかって - 。(解説より抜粋)

とまあ、話はこんな感じで進んでゆきます。間に別の話を挟んで、熊、犬、熊、犬、・・・・・・・、犬、犬、熊、と進みます。

この本を読んでみてください係数  80/100

肉弾 (角川文庫)

◆河﨑 秋子
1979年北海道別海町生まれ。
北海学園大学経済学部卒業。

作品 「東陬遺事」「颶風の王」「土に贖う」など

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